第9話『強い意志』
「ホァチャア!!!」
「!!」
今日は休日。満月は早速修行が出来る場所を探して人目の居ないところを歩いているとどこからか凄い雄叫びが聞こえてきた。驚いてその場に立ち止まる。
ほぁちゃあぁ?え、格闘の人でもいるの…?
そーっと声がした方を覗き込んでみると黒い格好に三つ編みをした男が立っていた。
そして近くの木が粉々に粉砕されているのである。満月はゾっとした。
私は何も見なかった。私は何も見なかった!
気づかれる前にとっと逃げ…
「誰だ」
(わぁぁっ!!気づかれちゃったぁぁぁっ!!!?)
満月は泣きそうだったが覚悟を決めてその男の前に姿を現した。
「ど、どーも」
「…能力者の臭い…」
「(に、臭い!!?)えっ?!いや、あの…!」
「…去るがいい」
「…え?」
そう言うなりまた自分に背を向けた男の後姿を呆然と眺めた。
え?私が能力者って分かったのに倒さないの?
だって、能力者を知ってるって事は彼も能力者って事…でしょ?!
そして男は満月を気にせずまた木を壊していた。それをじっと見たあと、満月はその人に向かって歩き出した。
持ってきていた荷物をその辺に置いて熊のぬいぐるみを取り出す。そして男が壊した木の上にぽんっと置いた。
そこで男は動きをまた止めて満月に視線を移す。
「…何をやっている?」
「え。修行」
「!」
男は目を見開いて満月を見た。しかし、満月は特に気にした様子もなく鉛筆を取り出す。
「私、修行できる場所を探していたんだけど中々見当たらなくって」
「………」
「でも貴方もここで修行してるんでしょ?だったらここでしようと思って」
「………」
「あ!心配しないでっ。邪魔はしないから!そこで1人でブスブス(!)やってるから!貴方もどうぞ私に気にせずやって下さい!(というか見ないで!<泣)」
それでも視線を感じる。満月は人に見られることで多少緊張したが気にしない事にして先ほどの鉛筆をナイフに変え熊目掛けて投げた。
ブスっと音を立てて熊の眉間に刺さる。そしてまた投げる。その繰り返しだ。そこで今までじっと見つめていた男がふと言った。
「李崩。私の名前ある」
「! あ、私は満月!神崎満月!」
名前を教えてくれた李崩に満月は嬉しそうに言った。
これで微妙な沈黙は無くなる!と思ったのもあるが、何より友達になれたような気がしたのだ。
その証拠に先ほどのような張り詰めた空気は無くなっていた。
「李崩。その木、ちょっと使っても良い?」
と、言って満月が指を指したのは今し方李崩によって割られ宙に浮いて落下してくる木の破片。
「…何に使うあるか?」
「まぁ、ちょっと見ててよ」
にこっと笑ったあと、満月は足を振りかざす構えをした。そして満月の上に落ちてくる破片をまた蹴り上げる。
その蹴り方はテコンドーでいう掛け蹴りに似ており李崩は目を見開いた。
「…ふぅ」
「…満月。今のは掛け蹴りというやつか?」
「掛け蹴り?」
分からないというように李崩を見てくる満月に更に驚いた。
あの技は強靭で脚力とバランス感覚が必要とされる高度なテクニック。まさかそれを簡単にやりのけただと―――!!?しかも何も知らずに!!
何者であるか、神崎満月――――!!!
黙り込んでしまった李崩に満月は声をかけた。
「あ、あれ?どうしたの、李崩。すっかり無言になっちゃって」
「…満月。私はオマエの事を侮っていたある」
「え?え?え?(何か嫌な予感…」
「相手にとって不足なし!!」
「ま、待っ…(ひょっとして、ひょっとして…!!」
「いざ、勝負である!!!」
「えぇーっ!!?(ちょっと待てやぁぁぁっ!!!」
木ではなくこちらに向かい構えた李崩に満月は酷く焦った。
な、なんでっ!!?何でこうなってんの?!ってか、私が李崩に勝てる訳無いじゃん!
「ちょ、ちょっと待って李崩!!」
「!」
「私は貴方と戦う為にここに来たんじゃないのよっ!!あくまで修行ね、修行!!」
「………」
「だ、だから!今ここで私と戦うのは違うでしょ?ね?お互い良い修行相手になるじゃないっ!とにかく今はこっちに集中よ!戦うのはなにも今じゃなくても、お互いに強くなってからでも良いでしょっ?!ねっ!!?(必死」
暫くじっとそのままの体勢で満月を見たあと、ゆっくりと姿勢を正した。その様子に戦わないということを悟り満月は心から安心して一息ついた。
「満月の言うとおりである」
「ねっ!」
「私はこのまえ植木耕助に負けて修行中だったある」
「! 植木君?」
彼から知人の名が出て驚く。
植木君…?しかも負けた…って。この2人、勝負したの!?
唖然としている満月に気にせず李崩はぐっと拳を合わせた。
「私はもっと強くなるある!」
「……李崩」
「…満月。満月はなぜ蹴り技を使ってるあるか?」
李崩のその言葉に満月は真剣な眼で李崩を見た。それは先ほどの柔らかな彼女とは思えないほどの。
「私の能力は”鉛筆をナイフに変える能力”。勿論、これだけじゃ勝てない。私はここ数日のバトルでそれを学んだ。」
「………」
「そしてある才をきっかけに脚を使った攻撃が私には出来るんじゃないかと思って。
蹴り技を調べて自分流にアレンジしたの。
だって私は女でしょ?それについ最近まで本当に普通の中学生。いきなり戦えって言っても無理がある。
だから『廻し蹴りの才』を貰った時から私の戦法は2つね」
李崩にブイサインを向けて頷いた。それに首を傾げる
「…2つ?」
「そう。ナイフと蹴り技。私はこの2つしか戦えるものがない。」
だから私はこの2つを駆使できるようにするため修行をしているの―――!!!
強い意志のある眼を見て李崩は笑った。それを満月は目を見開いて見る。
「満月。その志、私は気に入ったある。満月が出来そうな蹴り技。私が教えてあげるある」
「え…!」
「満月は柔軟な身のこなし。きっと直ぐに出来るようになるある」
「……!!!」
自分に背中を向けた李崩に満月は感動して飛びついた。後ろからの柔らかい感触に思わず驚く李崩。
だがそんな李崩にも気にせずぎゅっと満月は李崩にくっついたままだった。
「あ、ありがとう!ありがとう、李崩…!!」
「……(何か照れるある」
けほん、と咳払いをして満月を離した。満月は慌てて離れてビシっと姿勢を正す。
「よしっ!これからは李崩の事を師匠と呼ばせてもらうね!お、お願いします!師匠ー!!」
「(し、師匠っ!!?)」
それから満月は夕方まで李崩にみっちり教えられ叩き込まれた。休憩してはひたすら木に向かっての蹴り練習。
直すべきところは李崩に指摘され、また蹴りを繰り出す。満月は李崩の言葉を全て聞き逃さないよう集中していた。
早く自分のモノにしたい。その一心で蹴り続けた。
私の能力はヘタしたら人の命を奪いかねない…!
だから能力ではなく才で相手を気絶させなければいけないんだ…っ!!
李崩は教えた事を全て吸収しようとする満月を見て驚いた。
ここまでやるとは…。それに呑み込みが早い…!
やはり、満月…オマエは強者…!!手合わせ出来る日が楽しみである!!
「…はぁっ、はぁっ、はぁっ」
「満月。今日はそこまでにしとくある」
「! でも…たぁっ」
満月は腰が痛くてその場に座り込んだ。それを見て溜め息をつく。満月の前に膝をつき目線を合わせる。
「満月。蹴り…それに教えた技は腰と膝に負担がかかる。いくら柔軟性に優れていてもこれだけやれば疲れるのも無理ないある」
「………」
「今日はもう帰るのだ。分かったな?」
「……うん」
素直に頷く満月を見て李崩は表情を緩めた。それに答えるよう満月も精一杯の笑顔を見せる。
「私、強くなれるかな」
「ああ。私の一番弟子には強くなってもらわないと困るある」
「! あはは…っ。そうだね。うん、頑張るよ。師匠」
暫く2人はそこに座り込んでいた。お互いに声を発する事は無かったが穏やかな時が流れていた。
続
9話目にて李崩登場!でした〜。最初はそんなつもり無かったのにいつのまにか師匠になってますよ、李崩さん(笑)
これから満月さんは李崩の事を「師匠ー!」と呼ぶのでお楽しみに(笑)
えっと、少しちらっと出てきたのですが李崩とは植木と戦った後に出会ってます。
まぁ、前回ロベルトと戦い終わったあたりと言っていたので当たり前なのですが(笑)
今頃植木君は黒影さんかロベルト入団ですね(だから早いって)
次はいよいよオリキャラでのライバル君を登場させたいな…と思ってます。
出来れば必ず出ますんで…っ!頑張ります。
2005.8.31
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