第18話『覚醒する能力』 最初は、植木君と相手側のユンパオ。 これは植木君がユンパオの限定条件を見極めた事で勝利を掴んだ。 そして、次はあいちゃんとカバラ。 あいちゃんの知恵と根性で勝ったかと思われたが、結局は引き分けとなってしまった。 だけど能力者相手に戦ったあいちゃんを皆褒めていた。 3回戦目は鈴子とまたしてもカバラ。 鈴子のあいちゃんを思う気持ちで、ピンチを乗り越え無事勝利する事が出来た。 そして、4回戦目―――― 『バトルフィールド・・・暗闇フィールド!!』 『カルパッチョチーム・・紫水!!』 『そして、植木チーム・・神崎満月!!』 ――・・私。やっと・・やっと、戦える・・! 「満月、無理はしないで下さいね?」 「・・うん」 力んだ満月を心配そうに見守る鈴子。 相手は満月に心の傷を作った人物。普通でいられる事が出来るか・・。それが心配だった。 何か、嫌な予感がする・・。 『暗闇フィールドへワープ!!』 翡翠、見ててね。 必ず、アイツを倒してみせるからね・・!! 今までと同様に選ばれた選手以外は全員別のところへ。 満月と紫水は真っ暗なフィールドで対峙する。 『このフィールドでは2分毎に足場が一つずつ消えてくんだ』 「!!」 足場が・・!!? 下を見ると長さ50cmくらいの正方形の床だった。これが1つずつ落ちていくという事か・・。 『ルールは簡単。フィールドから落ちたら負け。最後までフィールドに残っていたら勝ちだからね』 「・・・」 相手を落としたら勝ち。 この何も無いところでは身を隠す事も不可能・・って訳ね。 辺り一面何も無い。そして真っ暗だ。流石暗闇フィールド…。 『正方形の床が全部で120面。要するにこの勝負のみ制限時間がある。』 2分後毎に落ちる・・ということは1時間しかないっ! ギッと紫水を睨みつける。紫水は好戦的に捉える。 『ゲームスタート!!!』 「こうしてまた貴方と戦えて嬉しいな」 「・・俺もだ」 サっと満月は鉛筆を持ち構える。紫水も同様、糸をピンと張り構えた。 あの日が蘇る・・。つい鉛筆を持つ手が力む。 「私は・・私は・・・絶対に貴方を許さないっ!!」 大好きな翡翠を奪った人。 それが今、こうしてまた戦う運命にある。 あの時、私がどれだけ自分の無力さを呪ったか。 ギリっと奥歯を噛み締める。 今度は負けない――――!!! 「はぁぁっ!!!」 満月は両手に持った鉛筆をナイフに変えて紫水へと突っ込んでいった。 紫水はバッと糸を手前に張り以前同様鉄の棒へと変える キィィィンッ―――― 鉄と刃が合わさる音が響く。そしてお互い一歩も引かない押し合い。 しかし男女に力の差があって当然。満月はぐぐっと後ろへ押される。 「・・前より力ついたな・・」 「誰かのおかげで、ねっ!!」 ガッと力を込めて紫水の刃を弾いた。 と、同時に素早く後ろに回りこみ李崩直伝の回転横蹴りを喰らわせる。 「ぐっ・・!!」 速い・・・!! 以前とは比べものにならない程の隙の無い動きに紫水は驚いていた。 倒れる寸前に手をつき体制を整える。満月はまたナイフの本数を増やし構える。 「す、凄いですわ・・」 「満月ちゃんって”鉛筆をナイフに変える能力”だったんだね・・」 初めて見る満月の戦いに2人は感嘆の声をあげた。 犬丸もまさか満月がここまでやるとは思っていず驚いていた。 さすが『孤高の戦姫』と呼ばれていただけある―――!! 佐野もまた、真剣に満月の戦いを見守っていた。 思い出すのは以前、紫水の言っていた言葉。 『俺は、神崎満月を潰すために来た』 その言葉を思い出し、つい手を握り締めてしまう。 一体、この2人はどういう関係なんや・・? 「これで終わりって訳じゃ無いよね?」 「・・ハッ、当たり前だ」 キィン、キィン――!! 刃と鉄が重なりあう音だけが響く。後は床が下に落ちて消えていく音。 床がもう少なくなってきていた。 早く、仕留めないと・・っ!! 徐々に消えていく床を見て焦る。 そこを冷静に対処していた紫水が攻めにかかる 「っ!!?」 「・・満月。これで終わりだな?」 「しまった・・・!!」 床に気をとられていた隙に紫水の糸に右腕が捕まった ぐっと糸を引っ張られるとつられて満月の右腕も前に出てつんのめる。 「じゃ、このまま落ちてもらうか。『孤高の戦姫』。」 糸を切ろうと空いている左手でナイフを構えるがその前に左腕も右腕同様捕らえられ成す術が無くなった。 ぐっと足に力を込めてその場に留まろうとするが、紫水が糸を引っ張ると容易く前に動いてしまう。 まるで操り人形である・・・。 紫水はそのまま満月を自分の方に誘導すると目前まで来た満月の両腕を縛り付けた。これでもうナイフは使えない。 そして身動きのとれない満月の背中をトンっと押す。床が無いギリギリの所でつんのめる。 下を見るとそこは何もない。 ただの闇だった また一つ、満月の立っている横の床が下に落ちた。 「満月ちゃんっ!!」 「満月―――ッ!!!」 「満月さんっ!!」 バンッとガラスを叩いて叫ぶ植木達。糸を解こうにも腕は縛られていてナイフで切ることは出来ない。 紫水はそっと満月の耳に口を寄せて囁いた。植木達にも聞こえないよう満月にしか聞こえないような小さい声で。 「・・残念だったな。翡翠の敵がとれなくて」 「・・っ!!!」 はっと満月は目を見開いた。それを見て高らかに笑った。 脳裏に浮かぶのは笑顔の翡翠の顔。ギリっと噛み締める。 「ははははっ!!アイツも可哀相な奴だ。満月、お前を庇った所為で地獄に落ちたのだからな」 「・・! 黙れぇぇっ!!!」 満月は笑って油断している紫水の顔を目掛けて振り向き様に掛け蹴りを喰らわせる。 当然、紫水はモロに顔面に喰らい、後ろに吹き飛ばされた。起き上がろうとするが腹に痛みが走り起き上がれなかった。 満月が紫水の腹に足で蹴りつけたからである。 「ぐはっ・・!」 「煩い!煩い!煩いっ!!」 「ぐっ・・!がはっ!」 紫水を見下ろす満月の目に光は無かった。涙で濡れて見ている方が辛いような目をしていた。 どっと押し寄せる後悔の念。その所為で我を失ってしまっている。 そんな満月の目を見て佐野は顔を歪ませる。 こんな、こんな満月見たことない・・・・。 オレが居ない間何があったんや・・ ホンマにこの2人はどないな関係、ゆうんや・・!! 「満月・・・」 鈴子は満月同様辛そうな顔で満月を見ていた。 唯一、鈴子だけが満月と翡翠の事を知っていたからである。 満月は心の痛みを紫水さんにぶつける事で紛らわそうとしている・・。 だけど、そんな事をしても所詮は普通の女の子。 我にかえった時、自分のした事に耐えれる筈が無い。 このままだと満月が壊れてしまいますわ―――!!! 狂った機械のようにただ泣き続け紫水を蹴り続ける満月。 森はもうそんな痛々しい満月を見ていられずつい視線を外してしまった。 犬丸も植木も眉間に皺を寄せてただ無言で眺めていた。 「私は・・っ、あぁ・・っ、私、は・・・っ!!」 翡翠・・!翡翠・・・!!! 『満月・・』 「あんたさえ・・っ、あんたさえ、いなければぁぁっ!!」 「・・!」 紫水は咄嗟に糸を刃のような鋭さを持つ棒に変え、満月目掛けて投げた。 満月はその場を飛び退き右腕で自分の身を守る。満月が退いた事により、紫水は即座に起き上がり間合いをとった。 しかし深く右腕を掠めて血が流れ落ちた。それを見て紫水は口の端を釣り上げる。 「・・ふっ。その腕じゃ、もう何も出来ないだろう・・」 「・・・それはどうかしらね。」 「!!? なっ・・!!し、しまった!!」 満月はやっと自由になった両腕を振って見せてやる。 その時、初めて紫水の表情から余裕が消え去った。 先ほど右腕で守ったのは絡み付いていた糸を切るため態と自分から当たりにいったのである。 とは言ってもやっぱり右腕は使い物にならないか・・。 切り口が痛んで腕はもう上がらない。これではナイフを投げる事は不可能だった。 足場はもう満月と紫水が立っている所を含め後、6箇所。満月は最後の大勝負に出た。 左手で持ったナイフで紫水に切りかかったのである。それを見て鈴子は、はっとした。 『人を斬る感触って…凄い、怖いん、だね…。私…この能力を貰って後悔しちゃった』 『人を傷つけたくない……怖くて、怖くて、傷つけられない…!』 そう言って震える自分の右腕を押さえつけるように力強く左腕で押さえつけていた満月が浮かんだ。 自分が傷つくよりも他人が傷つく事が何よりも嫌な優しい満月。 涙を流しながら本当の事を話してくれた満月。 そんな満月がまた、人を傷つけようとしてる――――!! バンっと思い切りガラスを叩いて叫んだ。 「満月っ!!駄目です!!その人を傷つけては駄目―――っ!!!そんな事をしたら、また貴女が傷つくんですよっ!!」 「―――っ!!」 今まさに紫水の心臓目掛けて振り下ろそうとしたナイフがピタリと止まった。 その光景に誰も目が離せない。 カラァァァン―――― ナイフが落ちる音があたりに響き渡る。満月は震える自分の手を見てその場にしゃがみ込んだ。 「・・ぁっ・・・あぁっ・・」 「満月・・・。もう、十分です。傷つく満月を見たくありません!!お願いですっ。降参して下さいっ!!」 「・・・りん、こ・・」 「そうよっ!!満月ちゃんっ!!鈴子ちゃんの言う通り! 満月ちゃんは体だけじゃなくて心もボロボロなのよっ!?お願いだから、無茶しないでっ!!」 「・・あい、ちゃん・・・」 2人の悲痛な声が満月の心に直接響いた。 ・・私の事を心配してくれてるの・・・? で、でも・・私・・っ・・ 「満月――――っ!!!」 「! 植木君・・?」 「負けるなぁっ!!自分に負けるなっ!!」 「・・!!」 自分に・・・? 「お前は十分強い・・!!自分に自信もてっ!!俺が保証してやるっ!!」 「植木君・・っ!!」 どうして、そんなに植木君は強いの・・? 私は植木君に保証してもらえる程強くないのに・・・。 『満月なら、なれますよ。 植木君のような”正義”を持った人間に――――』 翡翠・・・っ!! 『満月と会えて本当に良かった・・・』 ・・・そうだ。私・・・。 グっと自分の拳を握り締めた。震える足で自分の体を支え起き上がった。 「満月ちゃんっ!!」 「・・ば、ばかな・・・。もう立てる力など無い筈なのに・・!!」 こんな所で負ける訳にはいかないんだ・・!!! 翡翠は守れなかった。助けてあげられなかった。 だから、今度こそ大切なものを守ってみせる――――!!! そのためにも、私は強くならなきゃならない・・。 強く、なりたい・・・っ!!! 「ちっ。だが、その体では得意の蹴り技は出せないだろ。これで終わりだ・・!!」 紫水は糸で満月を捕らえようとするがその前に満月のナイフが飛んできた。 それを残り少ない足場を移動して避けた。 所詮動けても投げるので精一杯か・・。 紫水はニヤリと笑った。 「満月!!」 「これで終わりだ・・っ!!」 「・・・・」 紫水が満月目掛けて糸を放った瞬間だった。 「ぐっ・・!?な、なぜ・・・っ」 それは満月の前でピタリと動くのを止めてその場に留まる。その光景に誰もが目を見張った。 一瞬の事で何が起きたのか分からない。そして、あまりにも現実では不可能なナイフの動きに驚いていた。 満月のナイフが自分で軌道を変え、紫水の背中に向かって飛んでいったのだ―――!! 「な、なんですの?今の満月のナイフの動き・・」 「今明らかに自分で曲がったよね。あのナイフ・・」 呆然と鈴子と森は見ていた。それを別部屋で見ていたロベルトは口の端をあげた。 「レベル2・・。現時点で使える子が居たなんて・・ね。あははっ、これは面白くなってきたよ!」 目を細めてモニターに写る満月を見た。 驚いたのは、満月本人もである。 い、今のは一体・・!!?ナイフが勝手に紫水を刺した・・・!? 『能力で変えた物に新しい超能力が付く。それが”レベル2”だ』 以前紫水と戦ったときに言っていた彼の言葉を思い出した。 じゃ、じゃあ・・今、私がしたことが・・・ レベル2!!? 「・・くそっ。レベル2が使えたのか・・!?」 紫水は自分の左腕に刺さったナイフを抜くと投げ捨てて満月を睨む。 満月は頭の中で自分の能力について整理していた。 今の私にレベル2が仕えることは分かった・・。でも、そのレベル2が齎した能力の使い方が分からない!? 一体、私のレベル2はどんな能力があるっていううの・・・!? ヒントは・・先ほどのナイフ。自分で紫水に当たっていった・・。 自分で・・・・? ・・・・・まさかっ!!!? 満月は辛うじて動く左腕で鉛筆でナイフを作りそれをがむしゃらに色んなところに投げた。 すると、ナイフは途中で軌道を変えて全て紫水に向かって飛んでいったのである。 その動きを見て確信した。 ・・・やっぱり。 私の、レベル2。それは ナイフにホーミング能力がついた事・・! ・・・これなら、勝てるかもしれない! 満月は命中の才で服だけを貫通させた。 バランスを崩し、倒れかけていた紫水に追尾能力のついたナイフ達は一斉に襲い掛かる 「!!」 忽ち紫水は数十本のナイフに床に貼り付け状態にされてしまった。上半身、下半身共に刺さっていて腕も足も上がらなかった。力をこめて起き上がろうとした瞬間、貼り付けられているその床が揺らいだ。 ――――落ちるっ!!! 「さよなら、紫水。そしてありがとう。私にこの能力を気づかせてくれて・・」 残酷なまでに綺麗な微笑を向けた満月を最後に紫水は暗い闇へと落ちていった。 やったよ、翡翠。見ててくれた? 私、一生懸命頑張ったよ・・? 「やったっ!!!満月ちゃんが勝った!!」 森はぐっと体をガラスに密着させて喜ぶ 他の仲間も満月の安全を確認できてほっと一息つく。 と、その瞬間 「っ!!」 満月は顔を歪めた。よく見ると自分の体に糸が巻きついているのが分かった。 紫水・・・っ!!! 落ちる時、咄嗟に糸に念じたのだろう。それが満月の体に巻きつき、身動き出来なくなった。 腕と体にぴったりと糸が巻きついていて外れそうも無かった。 残っているのは今満月が立っている足場のみ。逃げる事も出来なかった。 道連れにする気っ!? ぐっと力を込めて糸を外そうとしたとき 「・・えっ・・・」 急に襲う浮遊感。下を見てみると最後の足場が無くなっていた。 ずっと続く訳が無い浮遊感。と、同時にガクンっと体が下に落ちる。 それを見た鈴子はバンッと透明なガラスを叩く 「満月―――――っ!!!!」 それに返事をする事も出来ず、どこか遠くで鈴子の声を聞いていた。 鈴子・・・ごめんね。 もう駄目かも・・・・ 満月は下に吸い込まれるような錯覚を感じ、そのまま下へと落ちていった。 『紫水、満月共に場外負け。よって、この勝負引き分け――――!!』 そしてこのまま気絶して、バトルも終わるか、と思った時である。 ヒュッ ドスンッ――!! 「い、痛ぁぁぁっ!!?って、直かよっ!!」 「「満月(ちゃん)!!」」 尻餅をついた状態でスロットの間に戻ってきていた。 向かえ側を見てみると、紫水もそのまま落ちたのか倒れていた。ナイフはもう無くなっていたが、服がボロボロになっている。だが、これだけは確認できた。 紫水は気を失っていなかったことを。 当然といえば当然だ。現に満月も落ちたが気絶はしていなかったからだ。それを見た満月は複雑な顔を浮かべたが、直ぐに表情を和らげほっと一息ついた。 もう、紫水には執着しない・・。 彼だって認めてくれるはずだし、何より私自身が満足してるもの・・! だから良いよね?翡翠・・。 緊張が和らいだのか、はぁと溜め息をつく満月に森と鈴子が駆け寄ると、両方からガバッと2人に抱きつかれた。 え・・?なんだかよく分かんないけど、ひょっとして今私オイシイ?(こんな時まで 泣きそうな顔をして飛びついてきた2人にされるがままである。 ふと顔を上げると植木君と犬丸と目が合う。 「植木君・・犬丸さん・・・」 「すごかったぞ!!満月っ!!どうやったんだ、あのナイフ!!」 「大丈夫ですか?満月さん」 自分の事を心配して駆け寄ってきてくれた。 自分の戦いを凄いと褒めてくれた。 満月はぐっと涙腺が緩むのが分かった。咄嗟に下を向く。 その様子に4人は心配そうに見守る。 「・・・ありがとう、みんな・・」 消え入りそうな程小さい声だったが4人にはちゃんと届いた。 皆笑顔で満月を迎える。それにまたぐっと涙が出そうになったが堪えて笑った。 ”絆”は強い――――――。 続 最後、満月さんをどうしたら良いのか困りました(汗 気絶しちゃうと能力を失ってしまうので、かなり無理があるし矛盾してますが落ちたら気絶はせずそのまま戻ってくるという事にしました(本当に無理があるな 要は落ちている途中にスロットの間にワープしたんですねっ! よくよく考えてから書くべきでした・・あぁ・・・。矛盾してますよ、げほっ。 後、ヒロインちゃんが途中でご乱心に…!!(震 怒りと悲しみで今まで抑えていたのもがぷっつんといってしまったものだと思われます。 け、けして気違いではないんですよ…っ!(笑。そして逃げ腰 次はいよいよ佐野君と植木君ですねっ!! ラストの2人。書くの大変だし、カルパもいますんでマッハで駆け抜けます!(笑 2005.9.14 [忍] レンタル無料チャット [PR] 忍者ツールズ [PR] ヴィッツが当たるアンケート [忍] 無料レンタルサーバー
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