帰ってくる度に傷が増えている。 そしていつものように手当てをする。 こんな事、一体いつまで続ける気? 『wound』 「ただいま…。」 「おかえりお兄ちゃ…きゃあ!」 ミリーの悲鳴を聞いて、 ナガラは途中だった洗濯を放り出し、玄関へかけていった。 「ミリー!どうしたの!?」 「店長さん…、お兄ちゃんが…。」 下に目を向けると疲労困憊したハイジが床に倒れ込んでいた。 慌ててしゃがみ込んで様子を見ると、息はあるようだが明らかに殴られた痕があった。 これは…。 「ミリー、ハイジは大丈夫だから先に寝てていいよ。もう夜遅いし。」 ぐったりしたハイジを抱え込んだまま、ミリーに言う。 ミリーはこくんと心配そうにうなずくとそのまま2階へ行った。 「さて、ハイジー…聞こえる?」 「…そこまで…疲れちゃいねぇ…よ…。」 「そんな事言ってるワリには息荒いよ。ほら、今ソファに移すから。」 よっこいしょ、とハイジをソファに座らせた後 ナガラは救急箱を取りに行った。 …と言ってもすぐ近くに置いてあるのだが。 いつでも手当てができるように。 「ハイジー、手当てするからコート脱いで。」 「…いや、いい。自分でやる。」 「何言ってるの、いいから早く…」 「いいっつってんだろ!」 コートを脱がそうとした手を跳ね除け、身を隠すようにコートの襟首を寄せる。 息が整っているところを見ると大分良くなってきたようだが、やはり今回の怪我は酷いものが多い。 それにいつもならブツクサと文句を言いつつも素直に手当てを受けるのに… まさかとは思うが…と、ふいに嫌な予感がしたがナガラはわざとふざけた感じで接した。 「も〜う、オイラそんなイヤらしい事とか考えてるワケじゃないんだから大丈夫だって。」 「もし考えてるんだったらブっ飛ばすからな。」 「だから考えてないってば…、そんなに疑うんだったら自分で手当てしなよ。全く!」 「お前がいつもいつも変な事するから悪いんだろっ!!」 いつも通りにツっこんでくる様子を見て、なんだ気にしすぎか。と安心する。 そのまま途中だった洗濯物を片付けに行こうとしたが、 やはりハイジの様子がおかしい。 中々手当てを始めようとしない、というかナガラがその場を立ち去るのを待っているかのようだった。 「ハイジ?どうかしたの?…もしかして会社で何かあったんじゃ…。」 「Σちっ、違ぇよ!そんなんじゃなくて…ぅわっ!?」 逃げる隙も与えず、ハイジのコートの前をバッと広げる。 すると体中に殴られたような痛々しい傷に混ざって、赤く内出血したような小さいな痕がいくつも目に入った。 ・・・・・・痕? ハイジに目をやると、クソッ…と、気まずそうに目を逸らした。 そしてその瞬間、ナガラは全てを悟った。 確かにハイジが理由を口にしたくない気持ちも解かる。 「…また借金を取って来るのをフケちまってよ…、そしたら…」 「うん、解かったよ。解かったから、もうそれ以上言わなくていいよ。」 「逆らおうと思ったけど出来なかったんだ…!だって…。」 そのままふと口を噤む、ナガラはその理由も大分解かっていた。 恐らく、脅されているのだろう。 「ハイジ、コート脱いで。手当てするから。」 もう1度さっきと同じ台詞を言う。 でも今回は素直にコートを脱いだ。 背中にも痛々しい傷跡が点々としている。 「ちょっとしみるよ、我慢してね。」 「ああ…」 こんな痛み、上司から受けた屈辱に比べれば大した事など無いだろう。 それに厄介なのはその屈辱と言う痛みは、自分でさえも癒せないかもしれないのだ。 背中の傷にガーゼを当てながら、ナガラは悔しそうにそう思った。 そしてふとこんな事を口にした。 「ハイジ、辛いならいつだって辞めていいんだよ?」 「いや、それは出来ねぇ。オレの筋を通すためにも、ミリーもためにも…」 「じゃあ、オイラのために辞めてよ。」 「…へ?何言ってやがる。お前のためって…。」 「自分のためでもミリーのためでも辞める事が出来ないならオイラのために辞めてって言ったの。」 「ナガラ…何言って…」 「オイラはね、いつもそばにハイジが居て欲しいと思ってるの。」 「え…!?///いや、何なんだよさっきから…!ワケ解かんねぇ…」 と、言っている途中で後ろからハイジをぎゅっと抱く。 そして望まない行為によって付けられた赤い傷をなぞる。 「ハイジが傷だらけになって帰ってくるのは、オイラだってミリーだって辛いんだよ?」 「・・・・・・。」 「? ねぇ、ハイジ聞いて…」 「オレだってこんな痕つけられて嬉しいわけねぇだろ!  それに…あんな奴につけられるくらいだったら…」 「…だったら?」 「〜〜〜ッ///解かってんだろ。」 「ううん、解かんない。」 「て、てめ…!///」 嘘。本当は解かってる。 でもオイラはハイジに言わせたいから…。 それに、さっき怒ったからちょっとくらいいじわるしてやろう。と、心の奥で思った。 「…お、お前につけられた方がまだマシだ…///;」 「へぇ、本当?嬉しいなvv」 「っあ"〜〜〜!///言うんじゃなかった!;ていうかワザとだろ!ナガラ…」 怒鳴ろうとしたハイジの口を手で塞ぐ。 この流れだと普通は口で塞ぐところだが(ナガラは) ナガラの口はハイジの首筋にあった。 そしてそのまま、ちゅ…と小さく痕をつける。 「これでいいの?ハイジ。」 ニヤニヤとしながらハイジを見上げる。 案の定、ハイジは顔を真っ赤にしたまま硬直していた。 恐らくこの直後、ハイジのパンチが飛んでくるだろう。 その前にオイラはとっとと逃げた方がいい。 傷だらけの君につけた小さな傷。 でも、それで君が怒ったり殴りかかったりと元気になってくれるのであれば、 いくつだってつけてあげるv ++++++++++++++++++++++++++++++ 〜次の朝〜 「おいっ!ナガラ!!!」 「んぇ?何〜ハイジ…?」 朝っぱらから何事かと、体を起こすと ハイジが片手で首筋を押さえたまま顔を真っ赤にして(恥ずかしさか怒りかというのは別として)詰め寄ってきた。 「てめぇのせいで思いっきり残っちまったじゃねぇかよ!ホラ!!」 と、抑えていた手をどかすと昨夜ナガラがつけた痕がくっきりと残っていた。 「他の傷はサラシを巻いときゃなんとかなるがな、これ一体どーしてくれるんだよ!?;」 「そんな事言われてもね〜。そもそもハイジが言ってきたんじゃない。」 「誰も目立つところにしろとは言ってねぇだろ!!!///」 頭にきたハイジは道具紋から洗濯機を出して殴りかかってきた。 やれやれ、また一戦交える事になりそうだ…。 05/08/12 あ、甘ッ!;;;ゲホッ、オエ〜甘過ぎ…うぉわ〜〜〜;(落ち着け ごめんなさい、砂吐けますよねコレ。(まさにバカップル) ナガラを受けっぽく攻めさせたかった(?)ので全体的に甘くなっちゃったのですが…。 その前に傷ネタってどこかで書いてそうでイヤン。もし被っちゃったって方いましたらごめんなさい…!; でも書きたかったんだ!!!(オオオイ FC2 パソコン1台で稼いじゃってますヽ(*^▽^*)丿 キャッシング 花 無料ホームページ ブログ blog
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