第2話『能力の使い方』 「能力を使うには限定条件ってものがあるんだ」 「限定条件?」 今、居るところは翡翠が住んでいるアパートだ。急遽巻き込まれてしまった次の神を決めるためのゲーム。 中学生同士が戦いあって、優勝した人には”空白の才”っていう好きな才能をもらえる。 そのバトルが今日から始まると聞いたんですが――――― 「今日からって言ったって私能力の使い方分かんないしっ!」 「まぁまぁ、落ち着いて。それを今から教えるんじゃないですか」 相変わらずマイペースなやつだ。…まぁ、そんな所が気に入ってるんだけど。満月は正座をして翡翠の言葉に耳を傾ける。 「良いですか、満月?満月の能力は”鉛筆をナイフに変える能力”。そしてこれの限定条件は…」 翡翠が真剣な顔をして満月を見つめる。満月はごくりと喉がなった。緊迫した雰囲気があたりを包む。 ―――――と。 カランッ 「え?」 目の前に出てきたのは未使用の鉛筆。それを手にとって見てみる。何の変哲もないそこら辺で売っている普通の鉛筆だ。 それを翡翠は満月の目の前に転がした。 「それが限定条件です」 「えぇ!!?これが!!?」 この、普通の鉛筆がっっ!!!? もう1度鉛筆を見る。そして、はっとする。 ひょっとして翡翠は自分で限定条件を見つけろと言ってるのかな…。 鉛筆を見て真剣に考える満月を見てほくそ笑む。 やはりこの子は洞察力が鋭い…! 翡翠は嬉しそうに笑いながら更に鉛筆を増やした。先ほどと変わらない鉛筆が2本。 「ちなみにこの2本じゃ能力はだせないよ」 「え!?鉛筆は鉛筆でも違うの?」 増えた鉛筆2本も手にとりじっと見る。メーカーも同じだから形も全て一緒だ。ただ、この3つが共通している事は”未使用”だということ。多分、これは限定条件の一つだと思う。だけど、この3つの違いが――― あ。ちょっと待って…! 最初に貰った鉛筆。それは”2B”と書かれた未使用の鉛筆。後から貰った2つの鉛筆はそれぞれ”HB”、”B”と書かれていた。 まさか、これが2つ目の条件―――!!? 「ひょっとして、私の能力は”2Bの未使用鉛筆”じゃないと使えない?」 「お見事!よく分かったね、満月」 にこりと笑って褒めてくれた。なんだか照れくさくて俯いてしまったが凄く嬉しかった。翡翠は満月からHBとBの鉛筆をとると次は実践するよう促した。満月は少し緊張した面持ちで頷く。 すぅ、と深呼吸。そして鉛筆をぎゅっと握った。 ”鉛筆をナイフに変える能力”!!! すると握っていた鉛筆がナイフへと変化した。鉛筆を握っていた感覚も今やナイフを握っている感覚へと変わっている。 「凄い…」 「それが満月の能力さ」 翡翠はモバイルを取り出し、満月の才数を確認する。それを見てまたにっこりと笑う。満月は手元のナイフに気をとられていて気づかなかったが。 「満月は才を沢山持ってるね」 「才??」 「そう。最初に説明したよね?これを全て無くすと満月は消えてしまう。だから気をつけるんだよ」 「…うん」 「『命中の才』」 「え?」 満月はナイフを近くのテーブルの上に置き翡翠の方を見た。 「才を駆使する事もまたバトルでは必要なんだ」 「…才を、駆使する…」 「うん。幸運な事に満月には『命中の才』がある。これなら、満月の能力を生かせると思わないかい?」 にこりと笑って翡翠は満月を見た。 才を駆使する…。つまり、自分の持っている才を使いこなせればどんなに強い相手でも勝てる可能性は上がるということ…! バトルは”力”だけじゃ、駄目。”知恵”も使わなければいけない…! 満月はなんとなく、このバトルにおいて勝つために必要なものを学んだ。 「よしっ!!」 満月はぎゅっと握り締めた拳を前へ突き出す。翡翠は驚いて目を見開く。その様子にクスリと笑う。 「翡翠。何となくだけど、このバトルの事は分かったよ」 「…そうですか」 「うんっ!私、負けない。女だから体力とか力は男子には劣るけど、その分私には女ならではの武器がある。私は、私は、強くなるっ!」 満月は強い光を目に宿していた。それを見ると小さく頷いて自分もまた拳を突き出す。コツン、と軽くあたった。 「頑張って下さい、満月」 「勿論っ!」 2人の絆はまた強くなった。バトルの話はやめ、2人はお茶をする事にした。翡翠は紅茶を淹れるのが得意らしい。 是非、満月に飲んでもらいたいと言った。満月も紅茶は好きなほうなので喜んでいた。早速、準備をしようと席を立った瞬間――――― ビ――――――ッ 「わわっ!?な、何!?」 「…!!」 余りの大きさで行き成り鳴り出したモバイルに満月は驚く。しかし、翡翠はモバイルを見て真剣な顔をしていた。 恐ろしく真剣な翡翠の顔に心配になった。 「…どうしたの?」 「…満月、きましたよ」 ―――――最初の能力者が…!!
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